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おかえり、AI(エーアイ)スーツケース。3年の取材でみえた進化

にっぽん科学未来館の館内で、女性がエーアイスーツケースとともに歩く様子を写した写真。みためは一般的なスーツケースそのものですが、そくめんにモニターがついているのが特徴的です

日本科学未来館(にっぽんかがくみらいかん、以下、未来館)と、一般社団法人次世代(じせだい)移動支援技術開発コンソーシアム(通称、AIスーツケースコンソーシアム)が、共同で開発を進める、視覚障害者向け自律型誘導ロボット「AIスーツケース(エーアイスーツケース)」。

2025年に開催された大阪・関西万博では、182日のあいだ、視覚障害者600人以上を含む4800人以上もの人々を誘導し、武者修行してきました。修行の成果はいかに。

 

大阪・関西万博の会場、展示会場で撮影したエーアイスーツケースの写真。背後にわ、すうめいの人が写り込んでいます。エーアイスーツケースわ赤と青の大きなみずたまもようが特徴的で、グリーンの人工しばがしかれた、白い台のうえにおかれています
あまりの人気で、現地での体験はできませんでした

 

見た目は同じだけれど

白い機体、ハンドル、複数のセンサーに、操作用スマートフォン、ディスプレイ、車輪機構。大阪・関西万博の前後で、本体の見た目に大きな変化はありません。

その一方で、実際に体験してみると誘導の際の安心感は格段にあがり、目を閉じていてもより安心して移動できるようになっていました。

特に安心感の向上は、約3年にわたって進歩しつづける同スーツケースを追いかけ続けたからこそわかる変化といえるかもしれません。

主観的になりますが、今回はこれまでの総集編としてお届けします。

 

「安心感」のもとになるのは?

視覚に障害がある場合の歩行の難しさは、危険の予測が難しいことも大きな要因のひとつです。

同スーツケースでは、走行のスムーズさ、ストップのしかた、アシストの的確さ、音声ガイドのなめらかさといった複数の要因が重なることで、まるで隣に人がいて、いっしょに歩いているかのような安心感を得られます。

これまで複数回、このスーツケースを体験していますが、回数を重ねるごとに使いやすくなっています。

このつかいやすさに寄与しているのが、AI(エーアイ)による音声対話のスムーズさ、リアルタイム状況説明などをはじめとする、さまざまなテクノロジーたちです。

なかでも特徴的なのが、ハンドル部分にある「ディスク型方向提示装置」という丸い円盤状のシステム。指でふれられるコンパスのようなもので、ハンドルを握り、円盤についた棒状の突起を指先でふれていると、進む方向を直感的に確認できる仕組みです。

直進するときはそのまままっすぐ、まがるときはどの方向に曲がるかを、ちょうどいいタイミングで指先に教えてくれます。この安心感はかなり大きいものでした。

 

ハンドル部分のクローズアップ写真。ハンドルにたてながのボタンがひとつ、そのりょうサイドにまるいボタンがひとつずつついており、そのしたにディスク型方向提示装置がついています
目を閉じていても怖くありませんでした

 

人の多い場所で、目を閉じたまま目的地まで進む状況を想像してみてください。

前に進むことはわかる、でもいつ方向変換するか、それが右か左かもわからないのは視覚情報に頼れないなかで、かなり不安です。

ここにはおもにふたつの大きな課題があります。

 

どの方向に進むか

これについては詳しい説明は不要だと思います。

目をとじて直進していて、いきなり手をぐいっと引っ張って方向変換されたら、だいたいの人はびっくりするでしょう。これから進む方向が事前にわからないのは、想像以上に不安です。

 

ユーザーに知らせるタイミング

方向変換する際に、どのタイミングでユーザーに知らせるか。

細かい部分ですが、どちらの方向かという情報に加えて、知らせるタイミングが心理的安全性に大きく影響すると感じています。

他社の商品を取材したときも同じような課題を聞いたことがありました。

これは視覚障害者の歩行ナビゲーション開発の共通の課題かもしれません。

早すぎるといつ方向変換すればいいかわからず、遅すぎるとからだが追いつかず、安全上の問題にもつながりかねません。

絶妙なタイミングで進む方向を触覚で教えてくれるこのシステムは発明だと思いました。

ユーザー側の心の準備ができる、というのはかなり重要なアップデートです。

 

全盲の当事者の山本さんが、未来館のなかでエーアイスーツケースに誘導してもらっている過去の写真。あたまにわキャップをかぶっています
はじめて利用する人にもやさしい設計

 

余談になりますが、以前、ツバつきのキャップをいつもかぶっている全盲の当事者とお話したときのこと。

キャップをかぶっている理由を聞くと「もし障害物が目の前にあっても、このツバが先にぶつかってくれる」とのこと。

AIスーツケース(エーアイスーツケース)もおなじ理由で、目の前に障害物があってもこのスーツケースが先にぶつかってくれます。

ただ正確に誘導するだけではなく、ユーザーの心理的安全性も考慮された設計だからこそ、安心してからだを預けられるのでしょう。

 

3年の取材でみえた、AIスーツケース(エーアイスーツケース)の進化

屋外の走行で段差をなかなか乗り越えられず「がんばれ、もう少し!」と応援していた3年前。

今では段差も乗り越えられるようになり、エレベーターも人混みのなかでも自信をもって前に進み、人をよけたりストップしたりしながら誘導できるようになりました。

屋内、屋外それぞれ異なる機体だったのが、大阪・関西万博からは屋内外を一台で兼用しています。

その姿はまるで、三輪車(さんりんしゃ)を一生懸命こいでいた幼い子どもが、気づけば補助輪(ほじょりん)もはずれ、自由にあちこちいけるようになり、今は友人をエスコートしているかのよう。

親戚の子の成長を見守るおばさんのような気持ちで応援し続けた日々は、テクノロジーの進歩を間近で見られる貴重な経験でした。

そしてそれ以上のスピードで安心感のアップデートが続けられています。

体験するたびに「このスーツケースで視覚障害者を歩かせるんだ」という開発者たちの強い意志が伝わってきます。

もちろんまだ課題はありますが、この3年の成長を見る限り、これらもいつのまにか解消されていそうな気がします。

すでに体験された人の記録も、これから体験する人の一歩も、このAIスーツケース(エーアイスーツケース)の次の安心感につながっていくことでしょう。

2026年10月から約半年間の休館を控えている未来館、体験はぜひお早めに。

 

AIスーツケース(エーアイスーツケース)については以下URLから

https://www.miraikan.jst.go.jp/research/AccessibilityLab/AIsuitcase/

 

これまでのAIスーツケース記事一覧は以下から

大阪・関西万博が開幕!「AIスーツケース」体験は予約が確実

大阪・関西万博での実証実験がもうすぐスタート「最新版AIスーツケース」当事者体験レポート

ここまで進歩した!AIスーツケース、ついに大阪・関西万博で本格的に実証

 

AIスーツケース、2025年の大阪・関西万博で実証実験を実施

 

また使いたい、ではなく「もっと使いたい」。視覚障害当事者によるAIスーツケースレビュー

半歩先の未来の実現に向けて。AIスーツケースが日本科学未来館で一般利用を開始

「AIスーツケース」、屋外で単独走行へ向けまた一歩

ついに屋外走行!「AIスーツケース」、はじめてのおつかい

 

視覚障害者向け自律型誘導ロボット「AIスーツケース」、初の屋外実証テスト参加者募集を開始

 

本文ここまで

 

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