さわって体感できる展示に、アプリまで!視覚障害当事者と体験する日本科学未来館の体験レポートさわって体感できる展示に、アプリまで!視覚障害当事者と体験するにっぽんかがくみらいかんの体験レポート

よりたくさんの人が楽しめるように、アップデートを続けている日本科学未来館(にっぽんかがくみらいかん)。
ひとつ前の記事で紹介した、視覚に障害がある人を対象としたアプリ「日本科学未来館(にっぽんかがくみらいかん)アシストアプリ(以下、アシストアプリ)」「日本科学未来館(にっぽんかがくみらいかん)アシストアプリプラス(以下、アシストアプリプラス)」も使いながら、視覚障害当事者の白鳥環(しらとりたまき)さんといっしょに館内を体験しました。
今回は常設展示のなかの4つを紹介します。
3階・老いパーク「サトウの達人」
まずは、人間の老いがテーマになった常設展示「老いパーク」から。ネーミングもユニークなコンテンツ「サトウの達人」。耳の老化を疑似体験できる体験型展示です。
モニターの前に立ち、手前にある手のひらサイズのボタンを押すというシンプルなもの。
老化によって高音域から聞こえにくくなり、SやKなどの高音域の子音の聞き分けにくさを体験できます。受付窓口で呼ばれる名前のなかから「サトウさん」のときに挙手ボタンを押すという、本当にありそうなシチュエーションのシュールなゲーム。
こちらはアプリを使わず音声と触感で理解できます。

アプリを使って体験する、3階・老いパーク「スーパーへGO!」
老化による移動能力の変化を体験できます。「スーパーへGO!」では、足におもりをつけるなどして手前の画面に広がる道を進んでいき、スーパーまで歩いて買い物に行く体験ができます。
この展示はアシストアプリプラスの対象になっており、アシストアプリプラスを開いてかざすとスマホの画面に説明テキストが表示され、音声で解説がはじまります。動きを伴う展示もあるため、イヤホンを持って行くと便利です


アシストアプリプラスをつかって体験する、5階・世界をさぐる「未読の宇宙」
想像を超えるスケールの観測・実験装置を駆使して、科学者たちが宇宙についてどのように探究しているかを、没入感のある空間で体感できる展示。
目には見えない波長を含む光による宇宙観測、重力波(ジュウリョクハ)の観測、ニュートリノ観測、そして粒子加速器実験(りゅうしかそくきじっけん)の4つのアプローチを通して、天文学や素粒子物理学の知の最前線を少しだけ体感できます。
と、テキストで書いてもかなり専門的な分野ということが伝わるかと思います。
このなかのひとつに、360度の全周囲モニターがある映像展示があります。ここで「アシストアプリプラス」を起動します。
「音響透かし」と呼ばれる、コンテンツの音声に人にはほとんど聞こえない高い周波数の領域の音(おと)を定期的に入れ込み、アプリ側がその音(おと)を受け取ったらガイドを開始するしくみで、映像の途中からでもタイミングに合わせた解説を音声で提供します。

ベンチに座りながら、吸い込まれるような迫力ある映像。宇宙と交信しているかのような気分になれる展示です。アシストアプリプラスを使った白鳥(しらとり)さんも「音(おと)に注目してください、などの音声アシストがあるのでわかりやすいですね」とにっこり。
3階・未来をつくる「量子コンピュータ・ディスコ」
この展示では、ダンスフロアのようなキラキラしたブースでDJ体験を通じて、量子コンピュータがどのように計算をするのかのイメージをつかんだり、ショートムービーや漫画、映画、ゲームなどを通じて量子コンピュータについて体験しながら理解を深めていけます。
ダンスフロアでは、量子コンピュータのプログラミングを音楽で表現した展示を体験できます。

「量子コンピュータ」と聞くとものすごく難しそうなテーマですが、音楽にのせてゲーム感覚で理解しやすくなっていました。
驚いたのが、ここにもしっかり視覚障害者向けの工夫がされていたこと。

あたりまえのものとして視覚障害者モードがあるって、ありそうでなかなか難しいことではないでしょうか。それをさらっと実現する未来館、すごい。
ダンスフロアのあとは「量子コンピュータを生んだ、計算と物理の再会ものがたり」という展示へ。
ここでは部屋のような大きさだったコンピュータが机に乗るほどコンパクトになっていく、小型化の歴史をレゴブロックのジオラマで見られます。
視覚障害のある人にはわかりにくいかもなぁ、と思っていたら、科学コミュニケーターさんがニコニコしながらジオラマの下の引き出しを引きました。

なんと、その引き出しには「コンピュータの位置と大きさ」をレゴブロックで表現した、さわれる展示が! サイズの参考用に人間型のレゴブロックもひとつついています。
ジオラマはいろんな形状のブロックで表現されていますが、この展示のメインである「コンピュータ」の大きさを指で触れて理解できるような仕組みになっています。なにこれすごい。

白鳥(しらとり)さんも展示をさわりながら「小さくなった!」と驚いていたのが印象的でした。

また観たくなる映画のように「また来たくなる」展示
今日の体験の感想を白鳥(しらとり)さんに聞いてみました。
白鳥(しらとり)さん:普通に聞いたらきっと難しいだろうテーマもわかりやすく展示されていて、好奇心を刺激される感じがしました。
「未読の宇宙」で使用したアシストアプリプラスは、映像展示の途中からスタートしても、いま映っているシーンに合わせた場面から解説が始まるので、違和感がなくわかりやすかったです。アプリがあったからこそのアシストという感じでした。
展示そのものも着目するところを的確にアシストしてくれて視覚障害者に寄り添っているのですが、アシストアプリプラスでは「音(おと)に注目してください」と注目すべきポイントを的確に音声で伝えてくれた点がよかったです。

白鳥(しらとり)さん:「量子コンピュータ・ディスコ」では、科学コミュニケーターさんに付き添ってもらいながら説明いただきましたが、科学コミュニケーターの前山さんの説明も、何に注目すればいいかを補足してくれながら説明してもらえたので理解しやすかったです。
わたし自身、いいなと思った映画は2回観たいほうです。最近は「国宝」を観てまた観たいと思ったばかりなのですが、未来館の展示もアシストがしっかりしているからこそ、映画のように「もう一度来て、深く味わいたい」と思えました。
「国宝」を観たときと同じ印象を受けました。未来館、わたしの周囲の人にもすすめたいです。
2026年10月から半年間の休館を発表している未来館。気になる人はぜひお早めに。
日本科学未来館(にっぽんかがくみらいかん)
住所:〒135-0064 東京都江東区青海2丁目3番6号
開館時間:10時から17時(入館券の購入および受付は16時30分まで)
休館:火曜日(ただし、祝日や春夏冬休み期間などは開館の場合あり)、年末年始(12月28日から1月1日)
入館料:大人630円、18歳以下210円
電話番号:03-3570-9151(開館している日の10時から17時)
URL:https://www.miraikan.jst.go.jp/resources/exhibitions2023.html
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